はじめに
情報システムの開発や運用を手がけるシステムインテグレーター(SIer)は、日本のIT業界における中核を担っています。しかし、近年、SIerからの転職希望者が増加しており、その背景には多様な理由が存在します。この記事では、SIerを 退職 する主な理由に焦点を当て、従業員が直面している課題や職場環境の実態について深く掘り下げます。
SIer における仕事の性質は、クライアントの要求に左右されることが多く、頻繁な要件変更や厳しい納期が常態化しています。これらの要因は、従業員に対して過度なストレスや長時間労働を強いることがあり、職場離れの一因となっています。さらに、技術者としてのスキルアップの困難さや、給与の低さ、昇進の機会不足など、キャリアアップに対する障壁も存在します。これらの問題は、従業員のモチベーション低下や職場不満に直結し、結果として転職を検討する理由となっています。
本記事では、実際の従業員の声や業界の専門家の意見をもとに、SIerを 退職 する理由を詳細に解説し、その背景にある業界の課題に光を当てます。これにより、SIer業界の現状理解を深めるとともに、従業員が直面する問題の解決策を探求する一助となることを目指します。
SIerとは何かどのような仕事をしているのかについてはこちらで解説しています
理由①:要件変更と納期の厳しさ ストレスの原因
クライアントワークの挑戦
SIerでの仕事はクライアントからの受託がほとんどであるため、要望に左右されることが多いです。
要件変更が頻繁に起こり、これに迅速に対応する必要があります。
変更が多いプロジェクトでは、計画の見直しや再調整が必要となり、これが大きなストレス源になります。
納期との戦い
SIer では厳しい納期の中で多くの作業をこなす必要があります。
短期間での高品質な成果物の提出が求められ、これにより従業員は長時間労働に追い込まれることがあります。
納期へのプレッシャーは精神的な負担を大きくし、これが退職の一因となることがあります。
長時間労働とプレッシャー
要件変更と厳しい納期は、従業員に長時間労働を強いることが多いです。
特に炎上しているプロジェクトにアサインされた場合、仕事の量が増え、プレッシャーは一層高まります。
新人時代は自社内の上司との関係性に留まったかもしれませんが、三年目・四年目になると他社との折衝も増えるためプレッシャーも増加します。
過度なプレッシャー下に長時間おかれると、精神的、肉体的な健康に悪影響を及ぼし、職場離れを引き起こす可能性があります。
大きなプロジェクトになればなるほど、障害発生時は影響範囲が大きく長時間労働になりがちだよ。(私ももれなく長時間労働してるよ^_^)
理由②:スキルアップの困難さ 技術者のジレンマ
実践的な経験の不足
SIerでの業務においては、顧客との調整業務が多く、実際の技術的な作業に携わる機会が限られています。
大手SIer会社になればなるほど要件定義・基本設計工程のみを担当し製造開発工程はSESに委託するケースがほとんどです。
これにより、特に新しい技術や方法論を学ぶ機会が減り、技術者としての成長が停滞することがあります。IT技術を習得できると思い入社した若手にとっては大きなギャップを感じることになります。
技術的成長の障壁
SIerでは、プロジェクトの性質上、古い技術や方法論を用いることが一般的です。特に大手のSIerになればなるほど、大手銀行様や通信業者、電力会社などの大手産業行者様などがお客様になってくるため、既存の古い技術を使い続けることになります。
これにより、技術者は最新の技術トレンドや業界の発展に取り残される恐れがあり、転職先などのキャリアアップの機会が制限されます。
これにより、自己実現を目指す従業員はフラストレーションを感じ、転職を検討することがあります。
私も入社以来ずっと金融業界のシステムを扱っているよ。
使用している言語はCOBOL・・・(通称:化石と言われる言語だよ)
さらに製造は外部委託なのでそのCOBOLすら自分では書いていないんだ!
理由③:給与の低さと収入不満足:経済的な課題
下流工程の経済的影響
中小SIerの多くは下流工程に関わっており、受注額が少ないため、給与も比較的低めです。
特に多重請負構造の中で、下請け企業ほど受け取る報酬が少なくなる傾向にあります。
給料と仕事量の不均衡
多くの従業員は、仕事量に対して給料が不十分だと感じています。
特に、重労働や長時間労働を伴うプロジェクトでは、この不満は顕著になります。
経済的報酬への不満
給与の低さと仕事量の多さは、従業員のモチベーション低下につながります。
特に経済的な報酬を重視する従業員にとっては、転職を考える大きな理由となります。
多重請負構造はどこも同じだね。
ここで述べているのは中小の場合であり、SCSKや野村総合研究所等の大手SIer(元請け)であれば同年代と比べても高い水準だ。
SIerに入るのであれば大手一択だね!
理由④:客先常駐の環境難 適応の課題
新環境への適応
客先常駐は、自社のオフィスではなく、受託元(お客様)のオフィスで働くことを意味し、新しい環境に慣れるのに時間がかかります。
お客様のオフィスですのでオフィス内の大半はお客様会社の人であるため、環境の変化に敏感な方には強いストレスを感じることがあります。
コミュニケーションの減少
客先常駐により、自社のメンバーとのコミュニケーションが減少し、孤独を感じることがあります。
このような孤立感は、従業員のモチベーション低下や転職を考える理由となります。
客先常駐になるかどうかは参画する案件によるよ。
「客先常駐は絶対イヤ!」ということであれば配属先を決める際にその点を上司に伝えておこう。
理由⑤:長時間労働 ワークライフバランスの欠如
締め切りとの戦い
SIerの仕事は締め切りに追われることが多く、これが長時間労働を引き起こします。
PJのリリースはもちろんのこと、各工程の終わり厳守期限の資料作成など一重に’締め切り’といっても色々ありますが、どれも長時間労働になりがちです。
特に締め切りが近づくと、残業が増加し、ワークライフバランスが崩れることがあります。
プライベートの犠牲
長時間労働により、従業員のプライベートな時間が犠牲になることがあります。
これは、仕事と個人生活のバランスを重視する人々にとって、転職を考える大きな理由となります。
長時間労働で最もヤバいのは「何のために生きてるんだ?」って感情になること。
俺も経験あるがこの状態になったら本当にやばいのですぐに会社を休もう。
理由⑥:昇進の機会不足 キャリアの停滞
昇進の競争
SIerでは昇進の機会が限られており、まだまだ年功序列の風潮が強いため早期の昇進が難しくなります。
また、就活生からも人気企業であるため競争も高くなります。
これにより、多くの社員が昇進できず、キャリアの停滞を感じることがあります。
職業的な成長の機会不足
昇進の機会が少ないことは、従業員が新しい挑戦を求める動機となります。
特に、技術的な成長やリーダーシップスキルの向上を望む従業員にとって、より多くの機会がある他の企業への転職を考えることがあります。